2018年2月20日火曜日

少しずつ暖かくなってきました。出生前診断について。

2月も下旬となり、春が近づいてきました。

気温も少しづつ暖かくなっているのを実感します。

今回は、尋ねられることも多い、「出生前診断」についてです。

あと、話題の「着床前診断(PGS)」にも触れます。



★出生前診断について


 ○全国71施設で実施
 ○2013年4月から診断が開始されて3年間で30, 000人が受診
 ○21番の染色体が多いダウン症
 ○13番の染色体が多い重度の知的障害
 ○18番の染色体が多い重度の心疾患
 ○94%が人工中絶を選ぶ

 今後も出生前診断は話題になるかも知れません 。


★着床前診断について

下記の論文は「PGSのメリットとは?」


という内容でNCBI(米国国立医学図書館、国立衛生研究所)から

発表された論文です。

2010〜2014年に採卵し胚盤胞のPGSを実施した方274名の方で、

凍結融解正常胚移植を実施しました。

これと同一時期に採卵し新鮮胚盤胞移植をした863名の方の妊娠成績

と比較しました。37歳以下の方では、2群間の臨床妊娠率、生産率、

流産率に有意差を認めませんでした。

しかし、38歳以上の方では、非PGS群と比べPGS群で、臨床妊娠率

(単一胚移植で3.86倍、2個胚移植で9.91倍)、生産率(単一胚移植で

8.20倍、2個胚移植で8.67倍)は有意に高くなっていました。

ただし、流産率は2群間で有意差を認めませんでした。

また、採卵周期あたりで集計すると、38歳以上の方でみられた

これらの有意差は消失しました。


PGSはday 3のFISH法から始まりましたが、妊娠率の改善は

みられませんでした。

これは、胚の割球のモザイクの存在(それぞれの割球が異なる

染色体パターンとなる)と侵襲性(胚へのダメージ)のためと考えられます。

次に、day 5〜7の胚盤胞のCGH法が実施されるようになり、

現在はNGS法になりました。

PGSは、高齢の女性や流産を繰り返す方にメリットがあるのでは

ないかと考えられています。

正常胚を移植するため、妊娠率は増加し、流産率が減少しますが、

PGSによるデメリットとして、コスト増加や侵襲性(胚へのダメージ)

が考えられます。

PGSの有効性の検討には、適切な対照群が必要ですが、これまで

十分検討されていませんでした。

本論文は、凍結融解正常胚移植と新鮮胚盤胞移植の妊娠成績を

比較したものであり、


38歳以上の方ではPGSの有効性が認められますが、37歳以下での

有効性は認められなかった

ことを示しています。

採卵周期あたりで集計すると、これらの有意差が消失しますが、

これは1回の採卵ですべての胚を移植すると結局全ての胚を

検査したことになるためです。

つまり、1回の採卵で取れたものの中には当たりの数が

決まっているわけで、それを先に移植できるのが

PGSの強みであることになります。


※着床前診断(PGS)は、できるクリニック数が限られており

 まだ誰でもというわけではないようです。

今回も徳潤様からの資料を引用させていただきました。


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