2月も下旬となり、春が近づいてきました。 気温も少しづつ暖かくなっているのを実感します。 今回は、尋ねられることも多い、「出生前診断」についてです。 あと、話題の「着床前診断(PGS)」にも触れます。 ★出生前診断について ○全国71施設で実施 ○2013年4月から診断が開始されて3年間で30, 000人が受診 ○21番の染色体が多いダウン症 ○13番の染色体が多い重度の知的障害 ○18番の染色体が多い重度の心疾患 ○94%が人工中絶を選ぶ 今後も出生前診断は話題になるかも知れません 。 ★着床前診断について 下記の論文は「PGSのメリットとは?」 という内容でNCBI(米国国立医学図書館、国立衛生研究所)から 発表された論文です。 2010〜2014年に採卵し胚盤胞のPGSを実施した方274名の方で、 凍結融解正常胚移植を実施しました。 これと同一時期に採卵し新鮮胚盤胞移植をした863名の方の妊娠成績 と比較しました。37歳以下の方では、2群間の臨床妊娠率、生産率、 流産率に有意差を認めませんでした。 しかし、 38歳以上の方 では、非PGS群と比べPGS群で、臨床妊娠率 (単一胚移植で3.86倍、2個胚移植で9.91倍)、生産率(単一胚移植で 8.20倍、2個胚移植で8.67倍)は有意に高くなっていました。 ただし、流産率は2群間で有意差を認めませんでした。 また、採卵周期あたりで集計すると、38歳以上の方でみられた これらの有意差は消失しました。 PGSはday 3のFISH法から始まりましたが、妊娠率の改善は みられませんでした。 これは、胚の割球のモザイクの存在(それぞれの割球が異なる 染色体パターンとなる)と侵襲性(胚へのダメージ)のためと考えられます。 次に、day 5〜7の胚盤胞のCGH法が実施されるようになり、 現在はNGS法になりました。 PGSは、高齢の女性や流産を繰り返す方にメリットがあるのでは ないかと考えられています。 正常胚を移植するため、妊娠率は増加し、流産率が減少しますが、 PGSによるデメリットとして、コスト増加や侵襲性(胚へのダメー...